星空に包まれながら…
作:NO.198 深月さん



プルルプルル…
電話の呼び出し音が鳴る。

ガチャ

「もしもし」
「あっ、角宿?私、だけど」
様。どうされましたか?」
「うん。角宿、明日暇?」
「明日ですか?はい、空いています」
「じゃぁ、明日午後6時にA公園に来てくれるかな?話しがあるの」
「話…ですか?」
「うん、大切な話、角宿に聞いてほしくて・・・」
「分かりました。明日の午後6時にA公園ですね、必ず参ります」
「うん、じゃあね」

ガチャ
そういって電話は切れた。

の『大切な話』それは角宿に自分の想いを伝えることだった。

-次の日-

タッタッタッ…

今は午後6時40分。はとても急いでいた。

「あぁ、もう40分も遅刻なんて!角宿、まだいるかな?」

は今日、角宿に想いを伝えるのだ。
絶対に遅刻はしたくなかった。


今日の朝、角宿の為にクッキーを焼いていこうと思ったは、すぐに準備をし、珍しく1人でクッキー作りを始めた。
いや、『珍しく』は余計だったか?
想いを寄せている角宿にあげるのだから、もちろん愛を込めて…。
出来上がってから一口味見をし、箱に詰めていく。
そしてラッピングまで済ますと、電話の呼び出し音がを呼んだ。
相手は仲のいい女友達だった。

女同士の話は長い。
この時も、が思っていたより早く時計は動いていたのだった。
これが事の真相である。


そしてはやっとの思いで待ち合わせ場所、A公園に辿り着いた。
あまり広くない公園。
は、腕時計を気にしながら心配そうにしている角宿を見つけた。

「角宿!」

名前を呼ばれた角宿は、に気づくと傍へと駆け寄った。

様!」
「角宿、ごめん!」
様!一体どうしたんですか?」

角宿の目は厳しかった。

「あ…えっと…」

(どうしよう。角宿ったらすごく真剣だよ…。私から誘っておいて『友達とのお喋りが長引いちゃって…』なんて無責任なこと言えない。
あっ、そうだ!角宿なら・・・)

何を思ったのか、の口からこんな言葉が出てきた。

「そう!大変だったの。突然宇宙人が現れて、私ユーフォーに連れて行かれちゃったの。
でも私、との大事な約束があるからって宇宙人に説得して、今やっと地上に降ろしてもらったところなの。それで遅れちゃって…」

(…やっぱり本当の事言った方が良かった?)

怒られるかな?などと心配していると、

「そうですか」

角宿は真面目に答えた。
は角宿の予想外の言葉に、目をパチクリさせている。

「…へ?…信じたの?」
様のお言葉を疑うなど致しません。それより、お怪我はありませんでしたか?
お守りすることが出来なく、大変申し訳ありませんでした。」

角宿は目を閉じ、ペコリと頭を下げる。

「フフッ」

は、つい笑っていた。

「どうかされましたか?」
「あっ、ごめん、何でもないの。怪我は無いよ。遅れて本当にごめんね」

は頭を下げた。

「いえ、お怪我がなくて何よりです。ところで今日、オレに話しがあるとか」

その言葉が合図だったかのように、の胸の鼓動が少し早くなった。

「うん。でも、その前にこれ」

は、バッグから綺麗に包まれた箱を取り出した。

「これは?」
「クッキー。朝、角宿の為に作ってきたの」
「オレの為に…ありがとうございます、様」

角宿は箱を受け取ると、穏やかな表情で優しく微笑んだ。
その笑顔は、にとって今までに見たことのない特別な笑顔に見えた。
そして少しの間、思わず見つめてしまった。

「…ずるいよ、角宿…私にそんな笑顔を見せるなんて。ただでさえ緊張しているのに。
…私、角宿の事が…」

の頬が段々と赤く色づいてゆく。
そしてこの後、は『好き』という一番大切な言葉を言うことは出来なかった。

様!どうなされたのですか?頬が赤くなっております!
あぁ、オレのせいでございますね?オレが様に笑ったから!申し訳ありませんでした!」

と言うと、をフワッと抱き上げる。
は訳も分からず、ただ呆然としていた。
角宿は、

様、申し訳ありませんがしばらく我慢なさっていて下さい!すぐに風邪薬を用意致しますので!」

と言い、を抱き上げながら、慌てて家へと走って行った。

「風邪薬?!えっ?!ちょ、ちょっと!違うって!!角宿!!」

このの叫び声は、こんなに傍にいるにも関わらず、角宿の耳には届いてはいなかった。


少しずつ暗くなり始めた空には、いくつかの星がキラキラと輝いていた。
それは、未来を知っている星たちからの祝福だったのかもしれない…。



☆End☆




---DreamMaker